オンラインの個別指導で、講師1人に生徒1人。マスネットは、その形しか取りません。
Zoomをつないで最初に交わすのは、挨拶と、今日や今週にあった出来事の話です。教材を開くのは、そのあとになります。
授業はホワイトボードに板書をしながら進み、その板書は毎回そのまま生徒に送られます。授業が終わってからも、生徒1人ひとりの報告書を書く時間が続きます。
塾長の馬籠新八先生は、自分の塾を始める前、神奈川県の個別指導塾で教室長を務めていました。50〜100名規模の教室を1人で運営し、2校舎をまとめて担当していた時期もあります。
個別指導ではありました。それでも、引っかかりが消えなかったといいます。
なぜ1対1しかやらないのか。成績より先に何を置いているのか。そして、どこに住んでいても受けられるということが何を意味するのか。保護者の方に向けて聞きました。
30点が、80点になった日
——塾を始める前、いちばん引っかかっていたことは何でしたか。
「生徒1人1人に本当に注力できているか、と言われたら、自信を持って即答できない部分がありました。もちろん個別指導なので生徒ごとに対応させていただいてはいましたが、より丁寧に、1人1人に合わせたサポートができないか、といつも引っかかっていました」
独立を決めたきっかけとして、馬籠先生は1人の生徒を挙げます。中学2年生の女子生徒でした。
ある日を境に、その子が突然勉強するようになったといいます。きっかけは、なんとなく良い点数を取りたい、という程度のことでした。
テストまでの1か月弱、一生懸命に取り組みました。
今まで30点ぐらいだった数学の定期テストで、80点越えを取ってきました。本当にうれしそうな顔で報告をしてくれたのを覚えています。
やればできる、という成功体験を味わったあと、その生徒は少しずつ勉強に前向きになっていきました。
もっと生徒のために、勉強の習慣や成績を楽しく上げられて、いつか「あの時勉強して良かったな」と思ってもらえる場所を作りたい。そう考えたことが独立の出発点になり、2022年10月、マスネットを開きました。
始めた当初から変わったこともあります。今の生徒はAIやタブレットの学習に抵抗がなく、それが合う生徒には宿題をオンライン上で出すなど、やりやすいやり方に合わせて変えてきました。
変えていないのは、1対1でとにかく楽しく授業をするということです。成績を上げるだけではなく、勉強に対して少しでも前向きになってほしいという考えは、今も同じだといいます。
最初にするのは、勉強の話ではない
入塾したばかりの生徒に、馬籠先生がまずすることは、勉強ではなくコミュニケーションです。
ゲームでもスポーツでも何が好きなのか。普段どのような生活を送っているのか。どんな話し方をして、どこで感情が動くのか。授業の中で話をしながら、そこを理解していきます。
——なぜ、それが最初なんですか。
「生徒に合わせた授業や指導を行うためです。モチベーションを上げるために好きなことの話をすることもありますし、生活スタイルに合わせて、無理なく続けられる学習設計をしたいという思いもあります」
そのうえで、成績と成績以外にあえて優先順位をつけるなら、と聞くと、答えは迷いなく後者でした。
勉強の習慣をつけること。授業以外の時間に、家で5分でも10分でも机に向かう時間を持ってほしい、といいます。

自宅で机に向かう生徒。勉強の習慣は、授業のない日の時間につくられる。
そのための仕組みは、意外なほど地味です。
宿題や復習は、まず授業内で扱った問題だけに絞って出します。その場で、来週は何があるのかを聞きながら、これくらいならできる、という確認を生徒と一緒にします。
宿題はできるだけ授業の前までに提出してもらい、次の授業では必ず前回の宿題と復習の確認から入ります。
1回1回の授業で、何か1つ必ずできたという感覚を持って帰ってもらう。それが授業の設計基準になっています。
生徒に一番よくかける言葉も、そこにつながっています。「出来たね、素晴らしい」。
卒業した生徒に何が残っていてほしいかを聞くと、馬籠先生は卒業した瞬間には分からなくてもいい、と前置きしてから、いつか「あのとき勉強して良かった」と思える瞬間があったら嬉しい、と話しました。
志望校に合格したとき。次のステージで資格の勉強をしているとき。希望する会社に入れたとき。仕事で成果が出たとき。趣味を続けられているとき。
そのときに、一緒に勉強していた頃の習慣や、自分でやり方を見つけられるようになった感覚が活きていればいい、という考え方です。
1対1しか、やらない
経営の観点だけで言えば、1対2や1対3のほうが有利になります。オンラインでも技術的には可能で、実際にその形を取るオンライン塾のほうが多いのが現状です。
それでもマスネットは、複数指導をやらないと決めています。
特にオンラインだからこそ、1対1でしっかりと生徒さんと向き合いたいためです。片手間ではなく、その子が本当に楽しく授業をして、分からないところをしっかり言えて、結果的に成果につながる環境を大切にしています。
大手塾や他のオンライン塾との違いを聞くと、面倒見の部分だという答えが返ってきました。
教科は全科目に対応しますが、1人ひとり全く違う内容で授業を行い、プリントも教材も進め方も、誰一人として同じ生徒はいません。特に授業や宿題で扱う問題には気をつけていて、教材会社のプリントをそのまま渡すのではなく、その子に合わせて、授業で扱った問題をもとに作りながら取り組んでもらいます。
画面越しでも、手が止まった瞬間は分かる
オンラインだと生徒の様子が見えないのではないか。保護者の方が最初に気にされる点でもあります。
馬籠先生が見ているのは、生徒の表情、会話のやりとり、そして問題を解いている時間の長さです。手が止まったときには表情に出ます。
希望があれば手元カメラを使って、ノートの動きそのものを見ることもできます。数値やテストの結果より前に、こうした感覚的なところを非常に大切にしている、と話します。
理由ははっきりしています。分からない、と言い出しにくい子のためです。
1対1であれば、本人が声に出す前に気づくことができます。

実際の授業画面。ホワイトボードの板書は、授業のあとそのまま生徒に送られる。
扱うのが勉強だけとは限りません。プログラミングや思考力を鍛える教材を扱うこともあれば、勉強よりもまず、大人と話す習慣や、決まった時間に何かをするという習慣をつけるために、ゲーム感覚で取り組めるコンテンツを一緒にやることもあります。
勉強や成績のためだけではなく、その子に合わせた内容で、生徒が安心して過ごせる時間にする。そこまで含めて1対1の中身だといいます。
その分、1人の生徒のために使う時間は増えます。犠牲にしているものはあるかという質問に、馬籠先生は犠牲というわけではないと答えたうえで、その子のために時間を使うことは意識している、と言い添えました。
オンラインだからできること
- リアルタイムの1対1なので、その場でいつでも質問できます
- 授業時間を学校・部活動・習い事に合わせて柔軟に組めます。振替も可能です
- 板書は毎回そのまま送られるので、復習に使えます。毎日ファイリングして復習用にまとめている生徒も多くいます
- 報告書で、その日にやったこと・生徒の様子・次回以降の流れが毎回分かります。LINEと連携しているので、いつでも手軽に見返せます

宿題は、解いたページをスマートフォンで撮って送る。
「勉強しなさい」とは、言わないでください
保護者とのやりとりでは、生徒の状況の共有が中心になります。それに加えて、保護者から見た生徒の印象、どうなってほしいのか、何を求めているのかを聞き取りながら進めていきます。
最近もっとも多い相談は、勉強の習慣がないというものです。宿題をやらない、家ではゲームばかり、スマホばかり。
一方で、勉強だけではなく何か熱中して取り組めることを一緒に見つけていってほしい、という相談を受けることもあるといいます。
馬籠先生が入塾時に必ず伝えていることが1つあります。保護者の協力なしに、生徒は勉強できないということです。
ただし、その協力の中身は、多くのご家庭が想像するものとは逆かもしれません。
しかしそれは「勉強しなさい」とか「宿題やったの?」とかを言うことではなく、逆にそれは言わないようにお願いしています。
代わりに頼んでいるのは、宿題をコピーする、提出する、生徒のスケジュールや小さな変化を共有する、といったことです。一緒に頑張っていくうえで必要になるものを、その都度共有してもらいます。
——どんな生徒・家庭に来てほしいですか。
「本当にどのような方でも大丈夫です。全く勉強をしない子でも、どうしてもこの学校に行きたいという子でも、勉強だけじゃない何かを一緒に探したい子でも構いません」
唯一の条件は、環境の側にあります。オンライン指導のため、PCやタブレット、スマートフォンと通信環境だけは、各ご家庭で用意していただく必要があります。
どこに住んでいても、同じ授業を
馬籠先生が全国対応にこだわる理由には、自身の出身があります。田舎の出身なので、選べる塾が近くにないという状況がよく分かる、といいます。
住んでいる場所で、受けられる授業の質が決まってしまう。その前提を、オンラインは外すことができます。
ネットさえつながっていれば、どこにいても、その子のやりたいことに合わせた1対1の授業を受けられます。
対応範囲は国内に限りません。海外在住のご家庭も多く受け入れています。
日本に帰国する予定があってもなくても、日本の学年やカリキュラムに合わせた内容で進めることが可能です。帰国後の学校生活を見据えて続けるご家庭もあれば、日本語での学習そのものを継続するために使うご家庭もあります。

